メリットはあるが困難な部分も多い
医師や看護師だけではできない専門性の高い治療を行う「チーム医療」ですが、簡単に実践できるものはありません。なぜ実践するのが難しいのか、チーム医療のメリットとともに紹介していきます。
医療の質の向上を目指して
各専門分野のスペシャリストが集まって、それぞれの専門性に応じた治療やケアを実践するチーム医療は医療の質を向上させることを目的としています。医師や看護師だけではできなかった治療やケアが、各専門分野のスペシャリストと分担して行うことができるため、より専門性の高い治療やケアが可能になるからです。
「これまでも各専門分野が連携して治療を行ってきていたのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、チーム医療は各専門分野と連携が取れなければ機能しないため、そう簡単には実践できないのです。事実、厚生労働省が「チーム医療の推進に関する検討会」を立ち上げるまで実践できている病院はそれほど多くなく、「チーム医療という言葉は知っているけど…」程度でした。国を挙げてチーム医療を推進することで一般的にも周知され、今では当たり前のように実践されているのです。
チーム医療を実践するために
チーム医療の実践がなかなかすすまなかった理由は各専門分野との連携が難しいことばかりではなく、「医師が絶対的な存在であったこと」も大きく関係しています。これまでは医師が絶対的な存在であり、医師の指示に従ってそれぞれの業務を行うことが当たり前でした。ピラミッドの頂点に医師が君臨し、その下に看護師や薬剤師、理学療法士などがいる構図です。すべての権限は医師にあり、医師の指示がなければ治療もケアもできない状態でしたが、チーム医療を実践するためにはこの状態を改善する必要があります。チームを編成する前に、まずは病院の体制を変えることからはじめなければならないのです。
チーム医療の難しさとは
チーム医療の中心にいるのは患者さんです。患者さんを囲むように各専門職がいて、連携しながら治療やケアを行いますが、医師の一方的な指示だけでは連携が取れません。各分野のスペシャリストたちとチームを組んで医療方針を協議してから医師が治療方針を決定し、共通の認識や意識を持って連携しながら治療やケアを行っていくことでチーム医療が機能するのです。
しかし、それぞれ専門とするところが違うため、患者さんの見方や重要視する点に違いが生じ意見が食い違ってしまうこともあります。共通の認識や目的を持つのは簡単なようで難しいため、個々の意見を主張するだけでなくお互いの意見を上手く融合するために調整していくことが大切です。「共通の目的に向かって連携して治療を行う」という形をきちんと理解して実践できるか、がチーム医療の課題です。