基本の考え方
専門性を持つ各部門のスタッフが集結してそれぞれの分野の技術や知識を出して協力し合うチーム医療は病気やケガの患部だけでなく身体全体をじっくりと診てもらえるため、患者さんにとってメリットが多いです。
チーム医療とは
病気やケガをしたら、まずは病院に行って診察してもらい、医師の指示に従って看護師に治療してもらったり薬局から薬をもらったりするシステムが主流でした。医師、看護師、薬剤師、それぞれのつながりは薄く連携というよりは独立した形でしたが、医療が発展しさらに高度化・複雑化したこと、患者さんの問題も多様化していることもあり、各部門が独立したままでは適切な医療を提供することが難しくなったため、それぞれの分野のスペシャリストがチームを組んで連携する必要があるとして「チーム医療」が注目されるようになりました。
「その人全体」を診る
人の身体は腕や脚、頭などのパーツがただ集合しているわけではありません。「病は気から」という言葉があるように、心と身体はつながっているため気持ちが落ち込んでしまうと体の機能が低下して病気になりやすくなってしまいますし、反対に心にハリがあるような楽しい毎日を過ごしていると生き生きと健康に過ごすことができます。そのため、診察の際はただ病気やケガをしている「患部」だけを診るのではなく、その人の心理や社会的側面も含めた「全体」で診ることが大切です。患者さん全体を診察し、適切なケアを行うためには医師一人だけでは足りません、看護師や理学療法士などそれぞれの部門との連携が必要です。
また、少子高齢化がすすむ日本では病院医療だけでなく在宅医療も重要になると考えられています。適切な在宅医療を提供するためには医療だけではなく、介護や福祉関係と連携し情報を共有化しなければなりません。
患者さんの多様なニーズに対応する
研究や技術開発で日々進歩する医療の高度化に対応するためにもチーム医療が必要だといわれています。時代によって患者さんを取り巻く環境は変化しているため、医療従事者の業務は複雑化していますが、患者さんの求めるニーズに応えるためには治療やケアの質を高めるしかありません。きめ細やかに対応するためにもスタッフ同士が連携して専門性を発揮することが必要なのです。
患者を中心としたより質の高い医療を実現するためには、1人1人の医療スタッフの専
門性を高め、その専門性に委ねつつも、これをチーム医療を通して再統合していく、とい
った発想の転換が必要である。
引用:チーム医療の推進について(案)
この資料はチーム医療を進めていくうえで参考にしたい、それぞれのスタッフの役割の拡大について書かれています。具体的な業務例も書かれているためよりイメージしやすくなっています。 |
たとえば、近年耳にする機会が多くなった「生活習慣病」。生活習慣病とは糖尿病、高脂血症などの入院を必要としない病気のことですが、糖尿病の治療はインスリン注射の投与や薬物療法、食事療法、運動療法など患者さんの生活に直接かかわることが多いため、医師の知識だけでは十分な治療はできません。医師が舵取り役となってチームを編成し、看護師や薬剤師、栄養士、医療福祉などそれぞれの分野のスペシャリストがお互いに協力することで患者さんに最適な治療を行うことができるのです。